エージェントなし、公立高校からカナダ・UBC森林科学部へ

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「いきなり農場集合」「大学の横の森集合」。授業の集合場所が毎回変わる大学があります。学部棟から集合場所まで1km以上。走っても間に合わない日は、「途中で諦めて、普通に遅れて行ってた」そうです。

カナダ・バンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学(UBC)の森林科学部。座学だけでなくフィールドワークや実験が多く、「土いっぱい掘る」日もあれば、森の中で2時間過ごす授業もあります。大きいキャンパスに憧れて選んだ大学は、「大きすぎて疲れる」ほどでした。

ただ、ここに至るまでの準備は全て自力。留学エージェントは使わず、高校の先生にも海外大学のノウハウがない環境で、大学探しから出願まで一人で進めてきました。

今回お話を聞いたのは、自然豊かな地域で育ち、公立高校のIBコースからカナダに渡った小林千里さん。現在はUBCの2年生です。(2026年1月取材)

INTERVIEW GUEST 小林千里さんの写真

「決めるのは他の誰でもない自分です」

小林千里さん

  • 留学先: UBC(カナダ・バンクーバー)
  • ルート: 公立高校IBコース → UBC
  • 準備: エージェントなし・全て自力
  • 部活: 陸上部(高3夏まで)
  • 生活費: 月約17万円(シェアハウス)

小林さんには、UBCを選んだ理由から、IB(国際バカロレア)44点の勉強法、TOEFLスピーキングとの格闘、エージェントなしでの出願プロセスまで詳しく聞きました。

カナダでの生活費の内訳やアルバイト事情、住まいの探し方、辛かったことも含めて、公立高校からカナダ・UBCに進学した道のりと現地での日常を聞いてきました。

※ 小林さんが所属する学部は、2026年1月にFaculty of Forestry and Environmental Stewardship(森林・環境スチュワードシップ学部)へ名称変更されています。

カナダのUBCに正規留学されている小林さんが海辺でカメラを構えている
CONTENTS

カナダで「森」を学ぶ理由

山を駆け回っていた子ども時代と「これはいかん」の原点

小林さんは子どもの頃から毎日のように山を駆け回って育ちました。山道ではないところを登るような遊び方もしていたそうで、「だいぶアグレッシブだった」と振り返ります。

小林さん

生き物とか自然が自分の身の周りにあったっていうのがベースにあって、そこで気候変動であったり生物多様性が失われていますみたいなことを勉強した時に、これはいかんなって思った。

環境問題に目が向いたのは中学校の頃。スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんが国連でスピーチをした記事を新聞で読んだことがきっかけでした。

高校ではIBコースに進みますが、その理由は少し意外なもの。中学の入学説明会で「IB候補生になったら同じクラスになれます」と書いてあったため、友達と「一緒にやろう」と決めたのだそうです。ただ、その友達はIBを途中で辞めてしまいました。小林さん自身はIBを続け、そこで「海外の大学にも行ける」という選択肢があることを知ります。IBを始めた時点で、すでに海外大学は視野に入っていたとのことでした。

なぜカナダ、なぜUBC

カナダを選んだのは、環境保全の分野で進んだ研究ができそうだと感じたから。国自体の自然が豊かであること、治安が良いこと、英語圏であることも理由に挙がりました。

もう一つ、頭にあったのは「いずれ日本に帰って、学んだ知識を使って何かしたい」という思い。熱帯の地域だと日本と気候が違いすぎるため、日本と似た緯度帯にあるカナダが候補に残ったという背景があります。UBCのあるバンクーバーはカナダの中でも温暖で、冬でも雪が降らないのだとか。

UBCに惹かれた決め手は、森林科学部の研究室でした。

クマとかカリブーの生息域や活動を、カメラを使いながらマッピングして、それが気候変動とか人が木を切ることによってどう変わっていくのかを調べている研究室があって、そこに興味を持った。

フィールドワークが多いと書かれていたこともUBCを選んだ理由の一つ。「大きいキャンパスに憧れがあった」とも笑っていました。

UBC以外には、カナダ東部のマギル大学、オーストラリアのクイーンズランド大学、大阪公立大学にも出願。いずれもUBCが落ちた時の保険で、第一志望は最初からUBCだったそうです。親に伝えた時の反応は「まぁいいよ。学費高いけど」。

カナダのUBC(ブリティッシュコロンビア大学)の校舎外観

出願準備——全部自分で調べるところから

「先生がはてな」の状態で始まった大学探し

海外大学への出願で最も大変だったのは、行きたい大学を調べる過程でした。

日本の大学だったら先生がいろいろ言ってくれるじゃないですか。それが全くなかった。全部自分で調べないといけないし、山のように大学の数があるから、どこから手をつけていいか分からない。

学校の先生には海外大学のノウハウがなく、エージェントも使っていません。リサーチはまず留学エージェントのウェブサイトで「カナダにはこんな大学がある」という概要を掴み、そこから各大学の公式サイトで出願要件や学部の内容を確認するという流れ。日本語と英語の両方で検索をかけ、「英語の方が情報量が多かった」と話しています。

大学のウェブサイトが一番です。でもボタンがいっぱいあってわけわからん。頑張って押していったらたどり着くんだけど、どこからたどり着いたか思い出せない。

調べた情報はパソコンで大学ごとにメモ。留学関連の本も読んだものの、「留学するなら学部はイギリス、大学院はアメリカが一番」といった内容で、あまり参考にはならなかったそうです。

振り返ると「JASSOの経験者セミナーなどに参加していれば、もう少し情報が得られたかもしれない」とのことでした。

IB44点と部活——6時起き・22時半就寝のコツコツ型

小林さんは高校3年の6月、県総体まで陸上部を続けていました。IBの勉強、部活、留学準備が同時並行の日々。当時の生活は、朝6時に起きて自転車で30分かけて通学、授業と部活をこなし、帰宅して課題に取り組んで22時半頃に就寝。平日だけでは課題が終わらず、休日はずっと勉強していたそうです。

IBのInternal Assessment(IA・科目ごとの校内評価課題)は、早めに着手することを意識していました。

早めから始めてたから、1日の課題の量をできるだけ少なくできた。

最終試験の勉強も、直前に一気に詰め込むのではなく、授業中に理解し、休み時間に過去問やワークブックの問題を解くスタイル。家に帰ってからの勉強は3〜4時間程度。学校の授業以外に参考書やYouTubeで勉強していたかと聞くと、「やらなかった。学校だけで行った。そこまで時間がなかった」との回答でした。

授業で寝ないこと。あとは過去問を解いて、分からなかったら「ここ知らなかったんだ」ってなる。基本的に全部頭に入ってる前提で解くから、知らないと驚く。

最終的なIBスコアは45点満点中44点。英語が7ではなく6だったため満点には届きませんでしたが、仮の成績もずっと44点で安定していたそうです。UBCの出願基準はIBスコア24点程度と高くはなく、IBスコアの面では余裕がありました。

カナダのUBCに正規留学している小林さんの高校時代、IBの勉強、部活、留学準備が同時並行の日々をイラストで表した

TOEFL——スピーキング19点との格闘

英語力はIBで土台ができていました。特にライティングは、毎週行っていた「スピードライティング」(時間を測ってひたすら書き続ける練習)のおかげで苦手意識が薄れたそうです。「文法云々よりとりあえず書いてみて、それから直せばいいや」というスタンスが身についていました。

リスニングはTED Talkを聞いて大まかな内容をメモしたり、部活引退後は毎日15分ほどポッドキャストを聞いたりして補強。リーディング・リスニング・ライティングの3技能については、TOEFL専用の勉強をほとんどせず、「対策本を買って問題形式に慣れた程度」で十分だったと振り返ります。

問題はスピーキングでした。

高2の3月に初めてTOEFLを受験し、総合80点台後半。UBCの出願基準は総合90点以上、かつ各項目(30点満点×4技能、計120点満点)にそれぞれ7割程度の基準が設けられています。リーディング・リスニング・ライティングは高2の時点で基準をクリアしていたものの、スピーキングだけが19点で届いていませんでした。

※ TOEFL iBTは近年試験形式やスコア体系が変更されています。ここでの情報は小林さんが受験した当時(2023〜2024年頃)のものです。

スピーキングを伸ばそうと試みるんだけど、他の3つの分野だけ伸びていって、スピーキングは伸びない。ずっと19だった。

高3の6月に部活を引退してからTOEFL対策を本格化。1日の勉強時間は少ない日で15分、過去問を解く日は3時間ほど。スピーキングは「過去問を解いて自分の音声を録音して聞く」というやり方で進めていましたが、なかなかスコアが動きません。

転機が訪れたのは9月。「自分でやるだけではダメだ」と悟り、ALT(外国語指導助手)の先生に放課後の時間を取ってもらってスピーキングの練習を始めます。

9月くらいから。遅っ! 先生と一緒に過去問を解いて、どれくらい伝わったかのフィードバックをもらったり、言い回しやフレーズを教えてもらったり。あと緊張感。

高3の10月、最終スコアは90点台後半。スピーキングも22〜23点に達し、UBCの基準をクリア。計5回の受験でした。当初は9月に終わると見込んでいたのが10月までかかり、焦りから大学にメールで「スコア提出が遅れてもいいですか」と確認したところ、「まあいいよ」と返事が来たそうです。

焦りがなかったら大丈夫じゃなかった気がする。焦りがあったから大学にメールしたし、先生に助けを求めたし。

振り返って「もっと早く先生に助けを求めればよかった。6月くらいから」と話す一方で、英語の勉強自体に後悔はないとのこと。「今思うとIELTS(TOEFLと並ぶ英語能力試験)の方が良かったかもしれない。日本人はそっちの方が取りやすいらしいから」という振り返りもありました。

ちなみにオーストラリアのクイーンズランド大学は全項目19点以上で出願可能。こちらはすでにクリア済みで、UBCがダメならオーストラリアという選択肢がありました。

「盛らない、正直に書く」——エッセイとJASSO

UBCの出願にはエッセイが必要でした。テーマは「あなたは誰」という自己紹介的な内容。課外活動とそれを通じた成長について書くもので、小林さんは陸上部の活動と図書館でのボランティア(おすすめの本コーナーを一緒に作った経験など)を題材に選んでいます。

盛らないこと。正直に書くこと。何をしたかよりも、それを通してどう成長したかを意識した。

「コツコツ努力する人です」という方向性で書き、ALTの先生に3〜4回添削を受けています。先生からは「ここどういうこと?」とたくさん質問されたそうで、それが分かりやすく伝える訓練にもなったとのこと。

エッセイを書く中で大事だったのは自己分析。小さい頃まで遡って「自分はどうして自然に興味を持ったんだろう」と考えた結果、「山を走り回っていたから自然に興味を持ったのか」と高3の時に改めて気づいた。自分の原点を言語化する作業でした。

なお、UBC以外の3校(マギル大学、クイーンズランド大学、大阪公立大学)はエッセイ不要。成績証明書・TOEFLスコア・IBの結果の3点で出願が可能でした。出願手続き自体も「写真を撮ってPDFにして送るくらい」で、意外とシンプルだったといいます。

JASSO(日本学生支援機構)の奨学金は、UBCのエッセイと同時進行で9〜10月に準備。JASSOのエッセイは「留学を通して日本社会にどう貢献するか」がテーマで、小林さんは「地域が主体となった生態系の保全活動が解決策の一つになるかもしれません」といった内容を書いています。

JASSOが一番めんどくさかったかもしれない。書くことが多くて。

成績、英語の資格、IBの成績、エッセイなど提出書類が多く、最も手間がかかったと振り返ります。JASSO合格後は費用面の不安がかなり軽くなりました。合格前は「受からなかったら留学しないでおこうかな」と悩んでいたところ、親に「大丈夫だ。心配するな」と言ってもらえたのが大きかったとのこと。

親に留学の話をさらっと切り出したのは高1の頃。本格的に「海外大学に行きたい」と伝えたのは高2の夏か冬くらいで、反対はされませんでした。

応援してあげよう、やりたいようにさせてあげようっていう感じの親だった。お金の心配もしなくていいよとは言ってくれたけど、顔に出てた。

留学準備も、基本的には小林さんが自分で調べて親に説明するという進め方。「これどうなの?」と聞かれたら「分かりました、調べておきます」と答える。そんな関係でした。

費用とお金の話

JASSO奨学金だけでは100万円以上足りず、親の援助とアルバイト収入で補っています。奨学金は本人名義の口座に振り込まれ、学費にも生活費にも充当。JASSO合格後は費用面の心配がなくなったとのことでした。

「目の前にあったから」——口座開設と送金

カナダに到着してすぐ、CIBC(カナダ帝国商業銀行)で口座を開設しました。必要書類はビザとパスポートのみ。

銀行口座を開設しなきゃって思った時に、目の前にあったから。

なぜCIBCかと聞いた時の答えがこれでした。

学費の支払いには国際送金を利用しています。親が小林さんの日本の口座に振り込み、そこからカナダのCIBC口座へ海外送金し、学費を支払うという流れ。クレジットカードでの直接支払いも可能ですが、手数料を比べると海外送金の方が安く済んだそうです。着金までは数日かかるとのこと。

1年目——寮時代の費用(月額目安)

項目金額
寮費約17万円(2人部屋)
食事プラン約9.5〜10万円(8ヶ月で75〜80万円・必須加入・3食付き)
その他(交通費・通信費・保険等)約3万円程度
合計約30万円程度

寮の食事プランは必須加入で、食べる量に関わらず定額。8ヶ月で75〜80万円ほどかかりました。

2年目——シェアハウス時代の費用(月額目安)

項目金額
家賃約13万円(2人シェア・個室)
食費約1万円 ※畑バイトの野菜供給あり
交通費約5,000円(コンパスカード・バスと電車乗り放題)
通信費約7,000〜8,000円(eSIM 約3,000〜3,500円 + Wi-Fi折半 約4,000円)
保険約9,500円(医療保険 7,500円超 + 盗難保険 約2,000円)
雑費約1万円
合計約17万円

※ カナダの医療保険とUBCの学生追加医療保険は加入必須。盗難保険は任意で別途加入しています。

通信はPhoneBox(フォンボックス)のeSIMを利用。月3,000〜3,500円で20GBの容量があり、速度にも不満はないそうです。他社と比較した上で安さが決め手になりました。Wi-Fiは入居時にポストに入っていたチラシで見つけたサービスを、ルームメイトと折半して月約4,000円。友人の中にはもっと格安のサービスを使っている人もいるとのこと。

家賃高い。意味わからん。

「想像より高かった」ものを聞くと、即答で家賃でした。

UBCでの日常

「土いっぱい掘る」授業スタイル

UBCの授業は、座学・ディスカッション・フィールドワーク(または実験)の組み合わせで構成されています。座学は50分が基本で、科目によっては80分。ディスカッションは30人ほどのクラスの中で3〜4人のグループに分かれて行います。フィールドワークや実験になると1回2時間程度。1学期に履修するのは5科目ほどで、1日50分×4コマくらいの時間割です。

フィールドワークが結構あるし、土いっぱい掘るし、実験もあるから、座学ばかりじゃないのが楽しい。自分がやりたいことを実際にやれてる。

課題はフィールドワーク関連が毎週、エッセイ(2,000単語程度)が月に1回ほど。成績は全科目80%以上をキープしています。テストとレポートの比重は科目によって異なり、テストが重い科目もあればほぼテストのない科目も。勉強法を聞くと「授業で先生の話を聞く。分からなかったところは聞く。それだけ」と、IB時代から変わらないシンプルさでした。

カナダのUBCに正規留学されている小林さんの授業スケジュール
カナダのUBCに正規留学されている小林さんの授業スケジュール

教授との距離は「近づけようと思ったら近づける」。大人数の講義では先生が前に立って話す形式ですが、授業後に直接質問に行くことは普通にできるそうです。授業中に先生が話している途中でも手を挙げて質問する学生もいて、「私はそこまでやる勇気がない。授業終わった後に先生のところにダーッと行って聞くくらいはできる」と話していました。

一方、キャンパスの広さには苦労も。

森林科学部の学部棟がキャンパスの端っこにあって、受ける授業がなぜか反対側で行われていた。1km以上ある1本道を汗かきながら走ってた。そのうち諦めて、普通に遅れて行ってた。

「いきなり農場集合とか、大学の横の森集合とかもある」のだそうです。大きいキャンパスに憧れて入ったものの、「大きすぎて疲れる」というのが正直な感想だと笑っていました。

カナダのUBCに正規留学している小林さんが仲間と共にフィールドワークを行った後の集合写真
(GBB編集部にて顔隠し加工)

英語——授業より友達の会話が難しい

授業の英語は意外と問題なかったそうです。

授業は大丈夫だった。先生は分かりやすいから。友達の会話の方が、省略するし早いし。

苦労したのは友達との日常会話の方。聞き取れない時は「聞くか流すか半々」だと話します。一方でコミュニケーションの取り方自体も変わり、ジェスチャーや表情、時には絵を描くなど「何を使ってもいいから自分の伝えたいことを伝える」スタンスが身についたとのこと。

友達は、ディスカッションや寮、ランニングサークルがきっかけ。カナダ人、日本人、フィリピン人、中国系カナダ人、中国人など、さまざまな国籍の人がいます。ランニングサークルは寮から引っ越した後に荷物の管理が難しくなって辞めたものの、そこでも友達ができたそうです。

「もっと英語を勉強しておけばよかったとは思わない。留学して人と話すのが一番いい勉強法だと思うから」と話していました。

突然の退去通告——寮からFacebookで見つけた家へ

1年目はUBCの学内寮で過ごしました。2人部屋で、寮を選んだ理由は「UBCの中にあって安心できるから」と「料理ができなかったから」。ルームメイトが「本当にいい人だった」こともあり、寮生活は恵まれていたそうです。

最初はやっぱ慣れるためにも寮の方がいい。大学の中に住めるから。

寮には1人部屋もありますが、2人部屋より家賃が高くなります。ルームメイトとの間で特にトラブルはなく、「静かな人で、夜10時くらいに寝る人だった」とのこと。

2年目の夏休みに寮を出て、日本人向けのシェアハウスサイトで見つけた家に引っ越しました。ところが、9月からの入居を決めていたにもかかわらず、直前に大家の都合で突然「もうすぐ閉めます」と告げられ、出ていかざるを得なくなります。1ヶ月ほど別の場所に住んだ後、Facebookで見つけた現在の家に落ち着きました。

今は寮時代のルームメイトと2人でシェア。それぞれ個室があり、キッチンとバスルームは共有です。大学からはバスで15〜20分、距離にして約5km。「走ろうと思ったら走れる」距離だそうです。

食費月1万円の秘密

食費が月1万円という数字の背景には、畑バイトの存在があります。

大学の畑でバイトしてて、野菜がすごくもらえたから、食費が少ないんよ。

使い切れないほどの量で、10月にバイトが終わった後もしばらく残っていたほど。

自炊では豆、豆腐、卵、鶏肉をメインに買い、クックパッドやインスタを見ながら料理しています。毎晩作り置きをして翌日の弁当に詰めるのが日課。「何がコスパいいか分からずに作り続けている」と笑っていました。

外食は月に数回、友達に誘われた時くらい。ちゃんとした食事をすると1食2,000円以上かかるそうです。

寮時代は食事プラン(3食付き・必須加入)を利用。食べる量に関わらず定額で、メニューは酢飯にマヨネーズが乗ったものや、パン、グリルしたかぼちゃなど。カナダに着いた時の食事の印象は「想像より良かった」とのこと。

アメリカの高校に通っていた人から「ハンバーガーとピザしかない」と聞いていたため、「それに比べると全然バラエティがあった」そうです。「帰りたいとは思わなかったけど、味噌汁が食べたいなとは思ってた」と話していました。

畑で野菜、図書館で時給——2つのバイト

アルバイトは大学のウェブサイトにある求人ポータルで見つけました。面接は英語で受けましたが、「日本と同じような感じ」だったとのこと。

夏休みが4ヶ月くらいあったから、その間畑と図書館して。畑が終わって、今は図書館だけ。

夏休みから始めたのが大学の畑でのバイト。10月にシーズンが終わるまで続けました。図書館は現在も週5時間ほど継続中。

時給は19〜20カナダドル(日本円で約2,000〜2,200円)。BC州の最低賃金が17〜18カナダドルなので、それよりやや高い水準です。夏休みの間は畑と図書館を掛け持ちして月約20万円の収入がありました。4ヶ月の長い夏休みは、しっかり稼げる時期でもあります。

畑バイトのもう一つの恩恵が、野菜の現物支給。食費の節約にそのまま直結していました。

カナダのUBCに正規留学している小林さんが仲間と共にフィールドワークを行った後の集合写真
(GBB編集部にて顔隠し加工)

辛かったことと、なんとかなるさ精神

留学生活で一番辛かったことを聞くと、「思いつかないなぁ」と言いつつ、こんな話が出てきました。

行った直後は会話のスピードが早すぎてついていけないのがだいぶ落ち込んだ。1対1は大丈夫なんだけど、3人4人と増えるとあっちのスピードになるから。誰にも相談することなく、しゅんと落ち込んでた。

そんな時、教授に話をしに行ったら「日本から来ただけでもすごいんだぜ」と声をかけられ、気持ちが軽くなったそうです。友達にもたまに慰められていたとのこと。

勉強面で大変だったことは「特に思わない」との回答。IB+部活を両立していた高校時代の方がしんどかったため、大学では「まぁなんとかなる」と思えているそうです。

前より「なんとかなるさ精神」が強くなった。全部自分でやらないといけないし、文化も違う人がいっぱい集まっているから、自分が今まで当たり前だと思ってきたことが全然当たり前ではなかったんだなって。

「当たり前が壊れた瞬間」としては、初対面で握手をすること、親しくなるとハグをすること、時間に対するルーズさ、講義室で前の席の人が足を引っかけながら授業を聞いていること、りんごを丸かじりしているのが日常であることなどが挙がりました。

寮の食堂でセルフサービスの食事を取っておきながら食べずに捨てる人が多かったことや、カナダの車社会(週末の家族旅行が日本で言う「端から端まで行く」ような距離)にも驚いたそうです。

治安——「気をつけていれば大丈夫」

気をつけてれば大丈夫だよ。変な場所に行かないとか。

UBCの周辺は夜でも問題なく、友人の被害としては自転車の盗難を聞いたことがある程度。

差別については、小林さん自身は日常生活の中で差別を受けて嫌な思いをしたことはないとのことでした。渡航前に心配がゼロだったわけではないものの、「なんとかなると思っていた」と話しています。

保険はカナダの医療保険(加入必須)、UBCの学生追加医療保険(加入必須)、住居の盗難保険に加入しています。実際に貧血の関係で保険を使い、採血を受けたこともあるそうです。

これからのこと

卒業後のキャリアは「まだふわっとしたイメージ」としつつも、方向性は見え始めているようです。

カナダに残りたい。環境コンサルティング——たとえば橋を作るような大きなプロジェクトがあった時に、その場所の周りの生き物や生態系にどんな影響を与えるのかを調べるような仕事——に興味がある。

大学院も選択肢の一つ。ただ「まず一回働いてみたい」との思いがあり、学部在学中に研究室の手伝いをして「自分が本当に研究したいかどうか」を確かめたいと考えています。1年生の時は環境保全に直接関係のない科目もありましたが、2年生からは専門的な内容が増え、「これから絞っていきたい」と話していました。

もう一つの軸は、いずれ日本に帰って環境保全活動に関わりたいということ。カナダを選んだ時に「日本と似た緯度帯で、学んだ知識を日本で活かしたい」と考えていた思いは変わっていません。

家族とはあまり将来の話をしないそうですが、それは話したくないからではなく、家族が根掘り葉掘り聞かずに信頼して見守ってくれているから。小林さんの決断を尊重するスタンスは、留学を決めた時から一貫しています。

最後に、留学を考えている人へのメッセージを聞きました。

自分を信じて頑張ってください。決めるのは他の誰でもない自分です。

エージェントも学校のサポートもなく、全部自分で調べて、自分で決める。そのスタンスは、カナダに渡った今も変わっていません。

免責事項

本記事の内容はインタビュー時点の情報に基づいており、費用・制度・条件は時期や個人の状況により異なります。ビザ制度や奨学金制度等は変更される可能性があるため、最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。本記事の内容に基づく判断や行動の結果について、当メディアおよび執筆者は責任を負いかねます。

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この記事を書いた人

マレーシアを中心に、海外の大学に通う現役学生への直接インタビューをもとに、進学のリアルを発信しています。費用・手続き・大学生活まで、実際に現地で学ぶ学生の声をそのまま届けます。

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