「カナダの大学に留学したい」と考えたとき、最初に気になるのは「何が必要なのか」「どう準備すればいいのか」ではないでしょうか。
カナダはアメリカと並んで人気の留学先ですが、実態を調べてみると、出願の仕組みや現地での暮らしはアメリカとかなり異なる部分があります。エッセイの量が少ない大学が多いこと、治安が比較的良いとされていること、学費がアメリカより抑えられる傾向にあること──こうした特徴は、情報として知っていても、実際に経験した人の話を聞かないとイメージしにくいものです。
この記事では、Go Beyond Bordersでインタビューしたカナダの大学に通う3人の経験者の話をもとに、大学選びから出願準備、現地での生活までをまとめました。
| 経験者 | 大学 | 出身 | 英語試験 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 小林さん | UBC 森林・環境管理学部 | 公立高校(IBコース) | TOEFL | エージェントなし、部活と両立、JASSO奨学金 |
| M.Kさん | UBC(フードサイエンス系) | 公立高校 | IELTS 7.0 / SAT 1400 | エージェントなし、13校出願、ビザ遅延で入学4ヶ月遅れ |
| りほさん | トロント大学 Health & Disease | インターナショナルスクール(NIS) | TOEFL 113 / SAT 1500 | IB履修、14校出願、入学時奨学金獲得 |
※2026年2月時点の情報です。出願要件・費用・制度は変更される可能性があるため、最新情報は各大学の公式サイトでご確認ください。
なぜカナダを選んだのか──3人それぞれの理由
小林さん:「日本と同じ緯度帯で、自然が豊かな国」
小林さんがカナダを選んだ理由は、環境保全という学びたい分野と直結していました。
生態系の保全とかに興味があって、そういう分野において進んだことが学べるところが日本以外にもあるかもしれないって考えていました。それでカナダを選びました。
カナダは国土の大部分が自然に覆われており、環境系の学問が盛んです。日本と似た緯度帯であることも判断材料になったそうです。いずれ日本に帰って学んだ知識を活かしたいという思いがあり、熱帯ではなく温帯の環境を選んだとのこと。
それに加えて、治安の良さと英語圏であること、そして大きいキャンパスへの憧れも理由に挙げていました(ただしキャンパスの大きさは後に「大きすぎて疲れる」と後悔しています)。
M.Kさん:「アメリカが怖かった」
M.Kさんは13校に出願し、アメリカの大学からも合格をもらっていましたが、最終的にカナダを選びました。
アメリカも全然受けていたんですが、最終的に親と話して、ちょっと怖いなとなりました。治安のこともありますし、当時はトランプさんの時期で、ビザの関係もあって、みんなアメリカの大学に行くのが怖いという雰囲気がありました。
治安への不安が一番大きかったそうです。海外経験がほとんどなかったこともあり、州別の犯罪率まで調べていたとのこと。
学費も判断材料のひとつでした。アメリカの大学から奨学金のオファーもあったものの、カナダドルの方が米ドルより安いため、トータルで考えるとカナダの方が現実的だったそうです。
UBCを選んだ理由としては、寒すぎない気候(トロントは候補から外した)、海と山がある自然環境、そしてキャンパスの雰囲気を挙げていました。
りほさん:「英語で勉強を続けたかった」
りほさんはインターナショナルスクールでIBプログラムを履修しており、英語で学ぶことが自然な環境にいました。
これまで英語で勉強してきたし、結構理系で専門用語とかも多いので、そのまま英語で勉強続けたいなって。あと海外の大きい都市で大学生やってみたいなっていうのはありました。
カナダとアメリカの両方を視野に入れつつ、14校に出願。最終的にトロント大学を選んだ理由のひとつは、専攻の自由度でした。トロント大学では「スペシャリスト1つ」「メジャー2つ」「メジャー1つ+マイナー2つ」のいずれかの組み合わせで専攻を選べる仕組みがあり、入学後に調整できる柔軟さに惹かれたそうです。
また、入学時の成績に基づく奨学金(エントランススカラーシップ)が出たことも後押しになったとのことです。
出願に必要なもの──カナダとアメリカの違い
3人の話をまとめると、カナダの大学はアメリカに比べて出願の負担が軽い傾向があるようです。
M.Kさんはアメリカとカナダの両方に出願しており、その違いをこう話しています。
カナダは本当にあまり準備することが多くないので、成績と、先生からのリファレンスが必要ないところも多くて。IELTSがあって成績があって、たまにエッセイがちょろっとあれば、アプライできる大学が多いです。
以下は、3人の話から見えた一般的な傾向です(大学によって異なります)。
| 項目 | カナダの大学 | アメリカの大学 |
|---|---|---|
| エッセイ | 少ない〜なし(大学による) | 共通エッセイ+大学個別エッセイ(複数本) |
| 推薦状 | 不要な大学も多い | 多くの大学で必要 |
| SAT/ACT | 不要な大学が多い | 求める大学が多い(テストオプショナルの流れも) |
| 英語試験 | IELTS or TOEFL(必須) | TOEFL(IELTSも可の場合あり) |
| 成績 | 高校の成績が重視される | 成績+課外活動+エッセイなど総合評価 |
M.Kさんの場合、13校に出願してエッセイは約20本書いたそうですが、そのほとんどはアメリカの大学向けで、カナダの大学への出願準備は「本当に最後にしかかけてなかった」とのことでした。
一方で、カナダの大学は成績(GPA)の重要度が高いという側面があります。エッセイや課外活動で挽回できる余地がアメリカほど大きくないため、高校時代の成績をしっかり維持しておく必要があるようです。
英語試験──TOEFL・IELTS・SATのスコア
3人のスコアをまとめると以下のようになります。
| 経験者 | TOEFL | IELTS | SAT | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 小林さん | 90超 | – | – | スピーキングに苦戦、ALTの先生に助けを求めて改善 |
| M.Kさん | – | 6.0→7.0 | 1400/1600 | IELTS 2回受験、SATは半数の大学には提出せず |
| りほさん | 113/120 | – | 1500/1600 | 高2秋に両方とも1回で取得 |
英語試験の勉強と対策
3人それぞれ、英語試験への取り組み方は異なっていました。
小林さん(公立高校・IB) は、TOEFL対策でスピーキングに最も苦戦しました。最初は一人で過去問を解いて自分の音声を録音していたものの、改善点がわからず伸び悩んだそうです。
1人で練習してたことが多分悪いんだと思います。過去問を解いて、その時にスピーキングも解きました。その時に自分の音声を録音して、聞いて、「ふーん」ってなるだけでした。
転機になったのは、ALTの先生に助けを求めたこと。放課後に一緒にスピーキング練習をしてもらうようになり、緊張感のある環境で練習できるようになったことが大きかったそうです。
M.Kさん(公立高校) は、高2の1月にIELTSとSATを初めて受験。IELTSは初回6.0で出願の最低ラインは満たしていたものの、奨学金を狙うにはもう少し高いスコアが欲しかったため、3〜4月に再受験して7.0を取得しました。
SATについては、数学は日本の高校で学ぶ内容で満点近く取れたものの、英語が難しかったとのこと。
SATの英語は、英語学習者ではなく英語話者向けのテストなので、最初はとても大変でした。
最終スコア1400は、トップ校向けには微妙なラインで、「出していいか分からなくて、結局使わなかったという大学も結構あります」とのことでした。
りほさん(インターナショナルスクール) は、高2秋にTOEFL 113、SAT 1500を1回で取得。インターナショナルスクールで英語での学習を続けてきた積み重ねが結果につながったようです。高2のうちに取り切ったことで、高3の秋はエッセイに集中できたと話していました。
情報収集と出願準備──エージェントなしで進めた2人
「全部自分で調べるしかなかった」
3人のうち、小林さんとM.Kさんは留学エージェントを使っていません。りほさんも外部エージェントは利用せず、学校のカレッジカウンセラーを頼りに進めています。
公立高校から海外大学を目指す場合、情報収集が最大の壁になるようです。
小林さんはこう話しています。
行きたい大学を調べる過程で、日本の大学だったら先生が色々教えてくれると思うんですけど、それが全くなかったので全部自分で調べないといけなかったです。
大学のウェブサイトにたどり着いても、構造が日本のサイトとは違い、必要な情報にたどり着くのに苦労したとのこと。
M.Kさんも、公立高校に海外大学受験のノウハウがなかったことが一番大変だったと振り返っています。先生が調べてくれて、ようやく4〜5年上の先輩とメールでつながれた程度だったそうです。
もっと早く知ればよかったなということがたくさんあります。学力とかも結局、全部情報につながってくると思うんです。
一方、りほさんはインターナショナルスクールにカレッジカウンセラーがおり、週1回のホームルームで大学準備の時間がありました。エッセイの添削もカウンセラーや先生、友人に頼み、「留学フェローシップ」という団体のプログラムも活用して先輩から情報を得たそうです。
環境によってサポートの差は大きいですが、共通しているのは早めに動き出した人ほど余裕があったという点です。
出願のスケジュール
3人の出願タイミングを並べてみます。
| 経験者 | 情報収集開始 | テスト受験 | エッセイ着手 | 出願締切 |
|---|---|---|---|---|
| 小林さん | 高校でIBを始めた頃 | 部活引退後(高3夏以降) | 高3 | 大学による |
| M.Kさん | 高2夏 | 高2の1月(IELTS・SAT初受験) | 高3夏 | 12月末〜1月(米・加) |
| りほさん | 高2の2学期 | 高2秋(TOEFL・SAT) | 高3夏 | 10〜11月(早期)、12〜1月(通常) |
M.Kさんは「高2の夏に調べ始めたのはちょっと遅かった」と振り返っています。りほさんも高2の2学期頃から始めていますが、高2秋にテストを取り切っていたため、高3では比較的余裕があったそうです。
小林さんは高3夏まで陸上部を続けており、「部活を引退するまでは留学準備に本格的に取り組む余裕がなかった」とのこと。引退後の4ヶ月で出願準備を完了させています。
現地での学び──UBCとトロント大学
UBCの授業(小林さん・M.Kさん)
UBCには小林さんとM.Kさんの2人が通っています。
小林さんは森林・環境管理学部で、フィールドワークの多さが特徴だと話しています。
2年生は、フィールドワークが結構あります。そこで、土をいっぱい掘ったり実験とかも結構あって、座学ばっかりじゃないのが楽しいです。
M.Kさんはフードサイエンス系の学部で、1〜2年生のうちは理系共通の大人数レクチャー(200人規模)が中心。学部の専門科目になると60人程度になるそうです。レクチャーに加えて、20人程度のディスカッションクラスがセットになっている形式が一般的とのことでした。
トロント大学の授業(りほさん)
りほさんによると、トロント大学は1〜2年生のうちは大規模レクチャーが中心で、数百人規模、ときには1000人を超える授業もあったそうです。
レクチャーが一方的というか、スピーチを聞きに行っているみたいな感覚の方が近いかなっていう感じで。
ただし学年が上がるにつれて状況は変わり、高学年では20人程度の少人数授業になり、教授とも「知り合い」のような距離感を築けるようになったとのこと。
| 項目 | UBC | トロント大学 |
|---|---|---|
| 1〜2年の授業規模 | 200人前後(学部による) | 数百人〜1000人超 |
| 高学年 | 学部により少人数化 | 20人程度、ディスカッション中心 |
| 特徴 | フィールドワークが多い(学部による) | チュートリアル(少人数セッション)あり |
英語の壁──授業より難しかったのは友達との会話
3人に共通していたのは、授業より友達との会話の方が難しいという感覚でした。
小林さんはこう話しています。
授業は意外と大丈夫でした。先生の話は分かりやすいです。友達の会話の方が結構省略するし早くなったりもするので難しいです。
1対1なら相手が合わせてくれるが、3人、4人と増えていくと相手のスピードになり、ついていけなくなるとのこと。
M.Kさんも同様の経験を語っています。
グループ内で話されていると、3、4人が同時に喋ったり、グループの会話ってどんどんテンポが速くなっていくので、もう3秒くらいでわからなくなることが多くて。
スラングがわからないこと、笑いのツボがわからないことが特に辛かったそうです。ただ、M.Kさんの場合は夏の4ヶ月間が転機になりました。日本人の友達がバンクーバーを離れている間、中国系カナダ人の友人グループと過ごすことで、スラングや文化的な笑いが理解できるようになり、「自信を持ってからだいぶ人と話すのが怖くなくなった」と話しています。
りほさんはインターナショナルスクール出身で英語力は高い方でしたが、それでも入学前からSNSで同級生とつながり始めるなど、環境への適応を早めに進めていたようです。
カナダの治安と生活環境
治安はカナダを選んだ理由のひとつに挙げる人が多く、3人とも概ね安心して過ごしているようでした。
M.Kさんは、バンクーバーの住宅街では夜遅く帰っても怖い思いをしたことはないと話しています。ただし、ダウンタウンでは薬物の影響を受けている人を見かけることがあるとのこと。
カナダって結構薬物などあるので、様子の変わった人たちが多いのですが、私が住んでいる住宅街などは結構安全で、夜遅くに帰っても暗いから怖くはあるのですが、実際怖い思いをしたことはないかな。
りほさんもトロントについて同様の印象を持っていました。
身の危険を感じることは絶対にないなっていう感じで。
カナダでは大麻が合法であることやホームレスが多いことは挙げていましたが、「住んじゃえば別に気にならない」とのこと。差別についても、バンクーバー・トロントともにアジア人コミュニティが大きく、3人とも差別を受けた経験はほとんどないと話しています。
一方で、トロントの冬の寒さはりほさんが「一番大変なこと」として即答した点でした。マイナス8度になることもあり、11月から3月頃まで寒くて暗い日が続くそうです。M.Kさんがトロント大学ではなくUBCを選んだ理由のひとつも「寒すぎる」ことでした。
| 都市 | 治安の印象 | 気候 | アジア人コミュニティ |
|---|---|---|---|
| バンクーバー(UBC) | 住宅街は安全、ダウンタウンは注意 | 比較的温暖 | 非常に大きい(中国系が特に多い) |
| トロント(UofT) | 身の危険は感じない | 冬が厳しい(マイナス8度も) | 大きい(チャイナタウンあり) |
UBCを選ばなかった理由、トロントを選ばなかった理由
面白いのは、3人の話をまとめると、UBCとトロント大学を比較して選んだ理由が見えてくる点です。
M.Kさんはトロント大学を候補から外した理由をこう話しています。
トロント大学は、まず寒すぎるのと、あといろんな人から聞いた雰囲気的にちょっとネガティブオーラが出ていて。
トロント大学は「University of Tears(涙の大学)」と呼ばれることもあるそうで、勉強がハードなイメージがあったとのこと。「息抜きできないと死んじゃうタイプなので、海とか山とか見れる方がいいかなと思いました」という判断でした。
一方、りほさんはトロント大学を選んでおり、専攻の自由度や奨学金が決め手でした。トロントの厳しい冬については「しょうがない」と受け入れつつも、4年経った今でも「一番大変なこと」として挙げています。
大学選びに「正解」はなく、何を優先するかによって判断が変わることがわかります。
カナダの大学への留学を考えるときに知っておきたいこと
3人の話を通じて見えてきたポイントを整理します。
出願について
- カナダの大学は、アメリカに比べて出願書類が少ない傾向がある(エッセイなし・推薦状不要の大学も)
- その分、高校の成績(GPA)の比重が大きい
- 英語試験はIELTSまたはTOEFLが必要(SATは不要な大学が多い)
- エージェントを使わずに出願した人もいるが、情報収集は自分でやるしかない部分が多い
- 公立高校から目指す場合、周囲に前例がないことが最大の壁になりうる
英語力について
- 授業は聞き取れても、友達との会話が難しいというのは3人に共通した経験
- グループでの会話になるとスピードが上がり、スラングも増えるためついていけなくなる
- 1対1では相手が合わせてくれることが多い
- 数ヶ月〜半年で慣れてくる人が多いが、個人差がある
生活について
- バンクーバーもトロントもアジア人コミュニティが大きく、差別を感じにくい環境
- 治安は概ね良好だが、ダウンタウンでは注意が必要
- カナダの冬は厳しく、特にトロントは精神的にも影響があるレベルの寒さと暗さ
- 食事は寮のミールプラン(1〜2年目)→自炊(それ以降)に移行するパターンが多い
費用について
- カナダドルは米ドルより安いため、アメリカに比べると学費を抑えやすい
- 入学時の成績に基づく奨学金(エントランススカラーシップ)がある大学もある
- JASSO奨学金を利用した人もいる(小林さん)
- 具体的な費用の内訳は、各インタビュー記事で詳しく触れています
3人のインタビュー記事
この記事でまとめた内容は、あくまで3人の話の一部です。出願準備の具体的な進め方、費用の内訳、授業の詳細、英語力の伸ばし方など、もっと深い話はそれぞれのインタビュー記事で扱っています。
小林さん──公立高校IBからUBC森林・環境管理学部へ
部活と両立しながら、エージェントなしで海外大学に進学。IBコースに入ったきっかけは「友達と同じクラスになりたかったから」。TOEFLのスピーキングに苦戦した話、エッセイで意識した「盛らない」姿勢、UBCでのフィールドワーク中心の授業について話してくれました。
M.Kさん──公立高校からUBC(フードサイエンス系)へ
周りに海外大学を目指す人がいない環境で、一人で情報収集から出願まで進めた。13校出願、エッセイ約20本。ビザの遅延で入学が4ヶ月ずれ込んだ経験、英語が通じず自信を失った時期、そして夏の4ヶ月で変わったきっかけについて話してくれました。
りほさん──インターナショナルスクールからトロント大学へ
14校に出願し、カナダ・アメリカ・日本の大学から複数の合格を獲得。トロント大学の専攻の自由度に惹かれて進学。1000人規模のレクチャーから20人の少人数授業への変化、寮生活からルームシェアへの移行、4年経っても感じるホームシックについて話してくれました。








