UCバークレーに合格して、蹴った。カリフォルニアには留学生向けの奨学金がなかった。一方、カナダからは4年間で約1,100万円のスカラーシップが届いていた。
行きたい気持ちと費用の現実を並べたとき、答えはトロント大学だった。入学後に専攻を柔軟に組み替えられる制度も後押しになった。そこから4年。家賃月1,350カナダドルのアパートで自炊しながら、奨学金で生活費をやりくりする暮らしが続いている。
今回お話を聞いたのは、トロント大学4年生のりほさん。名古屋のインターナショナルスクールでIBプログラムを修了し、2022年にカナダへ渡りました。(2026年1月取材)
テストの前倒し受験、14校出願のエッセイ戦略、IBスコア、UCバークレーとの比較、奨学金の使い方、トロントの住まいと生活費、冬の過ごし方、友達のつくり方、ボスキャリ就活まで。りほさんの4年間を詳しく聞きました。
インターナショナルスクールから海外大学へ
横浜からロンドン、そして名古屋国際学園
りほさんは横浜で生まれ育ち、小学3年生のとき、親の仕事の都合で1年間ロンドンに渡りました。当時、英語はまったく話せない状態。現地のインターナショナルスクールに通い始めたそうです。
もちろん言ってることがわからないとか、新しい学校で友達や授業についていけないとか、言語の壁は確かに難しかったなっていうのは覚えてるんですけど。でもネガティブな思い出はあんまりなくて、すごい楽しかったっていう方が強いです。
9歳の体験ながら「楽しかった」という記憶のほうが強く残っていたことで、帰国後もインターナショナルスクールを選ぶ流れになりました。愛知県の名古屋国際学園(NIS)に、高校卒業までずっと通っています。
NISは愛知でも大きなインターナショナルスクールで、生徒の約8割が日本人。帰国子女が多い環境だったとのこと。海外大学に進学する同級生も一定数いて、りほさんの代では日本の大学と海外が半々ぐらい。先輩の代は海外のほうが多かったものの、コロナの影響もあって年によって変わるそうです。同級生の進学先はニューヨーク大学、ミシガン大学、UBC、キングス・カレッジ・ロンドンなど、アメリカとカナダが中心でした。
日本の大学も選択肢にはあり、特に親にとっては費用面でも、家族が近くにいるという面でも魅力的な候補だったようです。ただ、りほさん自身の気持ちは海外に向いていました。
これまで英語で勉強してきたし、結構理系で専門用語も多いので、そのまま英語で勉強続けたいなと。あと海外の大きい都市で大学生やってみたいなっていうのはありました。


IBプログラムと「健康」への関心
NISではIB(国際バカロレア)プログラムを履修。ハイアレベル(HL)でバイオロジー、数学、日本語を、スタンダードレベル(SL)でケミストリー、英語、経済学を選択しました。
医療・健康系の学問に向かった背景には、自身の体質があったそうです。
もともと自分が結構アレルギー体質だったりとか、病院とか医療に関わることが少し多かったかなっていうのはあって、そのまま大学に入っても健康に関する勉強してます。
本人は「流れて」という言い方をしていましたが、高校時代のバイオロジーや、自分の身体を通じて医療に触れてきた経験が、自然と専攻選びにつながった形です。
テスト戦略——高2で終わらせた理由
TOEFL 113、SAT 1500——どちらも1回で
りほさんはTOEFLとSATをいずれも高校2年の秋(2020年10月頃)に受験し、それぞれ1回ずつで終えています。
| テスト | スコア | 受験時期 | 受験回数 | 主な対策 |
|---|---|---|---|---|
| TOEFL iBT | 113/120点満点 | 高2の秋(2020年) | 1回 | 特別な対策なし(インター環境) |
| SAT | 1,500/1,600点満点(数学790/英語710) | 高2の秋(2020年) | 1回 | 渋谷のSAT塾(2〜3週間)+Kaplanプレップブック+過去問 |
TOEFLについては「大学受験に向けて英語の勉強をしていたかと言われるとしていない」とのこと。インターで日常的に英語を使ってきた環境が、そのままスコアに反映された形です。
SATには具体的な準備がありました。本番の1年前、PSAT(SATの予備試験)の準備としてすでに本格的な勉強を開始。渋谷にあるSAT専門の塾に夏休みの2〜3週間通い、1日5時間ほどの授業を受けました。英語の文法セクションのレクチャーと、Kaplan(SATの問題集ブランド)のプレップブックを使った演習が中心だったそうです。
PSATの時点でもうSATの勉強をやり始めていたので、みんなが勉強する1年前から本物の勉強をしていた形でした。
塾の効果は感じていて、入塾時と修了時のテストでスコアが上がり、その後のPSATでもさらに伸びたそうです。SAT本番の勉強を再開したのはおよそ2ヶ月前から。過去問を中心に解き進めました。
SATの内容を勉強するんじゃなくて、SATの書き方を勉強するみたいな感じだった。
「1年前にやったし平気っしょ!」とちょっと調子に乗っていたところもあったと笑いつつ、直前期は毎日1回テストを解くペースで仕上げていたとのことです。
「わざとずらした」——高3の秋を忙殺しないために
テストを高2で受けたのは偶然ではなく、意図的な判断でした。
わざとそこをずらして1年前に取ったっていうのは覚えてます。
高3の秋はIBの勉強、出願のデッドライン、推薦状の依頼が同時に走る最も忙しい時期。周囲にはこの時期にTOEFLやSATを初めて受け、スコアに満足できず取り直すことで、出願スケジュールがずれ込む生徒もいたそうです。りほさん自身、チューターをしていた後輩が高3の秋にテストを受ける予定で「両立がきつい」と話しているのを聞いていました。
高3の秋にもしテストを受けていたら、もっともっと忙しかったと思います。
結果として、高3の秋はエッセイの執筆やIBのIA(Internal Assessment)に集中できる状態を作れたとのこと。1年前倒しという判断が、出願プロセス全体にゆとりを生んでいます。


14校出願——エッセイ・IB・出願が重なった高3
エッセイは「大元を数本書いて、バリエーションを展開」
大学探しを本格的に始めたのは高2の2学期目あたりから。NISではカレッジカウンセラーがいて、ホームルームの時間に大学の準備をする機会が週1回ほどあったそうです。エリア、大学の規模、提供されているプログラムなどを調べてリストアップし、高2の夏休み前にはショートリスト(志望校の絞り込みリスト)がほぼ固まっていました。
出願先ごとのデッドライン、必要な推薦状の数、誰に書いてもらうかなどをスプレッドシートで管理していたとのこと。
親との相談も重要な工程でした。学費の現実的な負担に加え、安全面への心配も大きかったそうです。当初カリフォルニアの大学を多く見ていたのは、アジアンコミュニティが大きい地域だから。親元を離れて暮らすことへの不安を、少しでも和らげられる環境を探していた背景がありました。
出願したのは約14校。カナダとアメリカの大学で、それぞれ複数のエッセイが求められます。
14個アプリケーション出したからと言って、14×3とか書いたわけじゃなくて、いくつか大元を書いて、必要に応じてちょっと変えるとか。文字数制限が違ったりするから、同じエピソードでも800字のやつと600字のやつと400字のやつみたいな感じで、バリエーションを作って出してました。
ブレインストーミングの段階で自分の経験やエピソードを幅広くリストアップし、聞かれそうな質問(「今までで一番大変だったこと」など)に対して使えるものを選んでいったそうです。エッセイを本格的に書き始めたのは高3の夏休み。
添削はカレッジカウンセラー、授業の先生、友達に依頼し、1つのエッセイにつき4回ほどフィードバックと書き直しを繰り返しました。友達にはその場でパソコンを見せて「ちょっと読んでくれない?」とフィードバックをもらうこともあったとのこと。
学校が小さかったっていうのが一番の武器っていうか良かったところ。結構親身に相談に乗ってくれたりとか、調べてくれたりとかしたので。
NISの規模が小さかったことが、カウンセラーとの距離の近さにつながっていたそうです。留学エージェントは利用せず、学校のサポートだけで出願を進めました。
そのほか、「留学フェローシップ」(リューフェロー)というプログラムを通じて、実際に海外の大学に通っている先輩とオンラインで話す機会もあったそうです。定期的に利用していたわけではないものの、数回の相談が「自分の留学決める中で結構大事だった」と振り返っています。
IBのIA——出願と重なった実験の日々
IBのIA(Internal Assessment)は4教科で提出が必要でした。バイオロジーはWHOのデータベースからデータを引っ張ってきて分析するタイプ、経済学はエッセイ形式と、比較的対応しやすいものもありましたが、ケミストリーだけは実験を選択。放課後に学校に残って実験を行う日々が続きました。
テーマは、絵具を溶いた汚れた水を化学反応で浄化するというもの。pHの変化を利用して絵具の成分を沈殿させ、水をきれいに戻す実験だったそうです。
ケミストリーだけ実験を選んでて、それがめっちゃ時間かかった。他のアプリケーションとかと同じ時期に被ってたりして、結構厳しかったなっていうのは覚えてます。
数学のIAは後回しにしてしまい、途中チェックの段階で「やばい、やらなきゃ」となったことも。出願準備とIA、そして通常の授業が同時に走る高3の秋は、やはり大変な時期だったようです。
IB最終スコア40点——Predictedは超えられなかった
IBの最終スコアは45点満点中40点でした。出願時に先生から提示されるPredicted Grade(予測成績)はこれより高く、バイオロジーや数学で7点満点中7が取れるのではと言われていたそうです。
プレディクテッドの方が高くて、実際に7取れたのがジャパニーズだけで、他全部6だったんですよ。
数学は得意科目だと思っていたのに、ファイナルエグザムに入った途端に難しかった、と話していました。ファイナルの勉強法は、2年分のノートの見返しと、オンラインで公開されているパストペーパー(過去問)を時間を測って解く方法が中心。過去問重視の勉強スタイルです。
ただ正直に言えば、3月頃にはトロント大学への進学が決まっていたこともあり、少し気が緩んでいた面も。
もう遊びに行っちゃったりとかして(笑)。正直もっとちゃんと勉強すればよかったって思うんですけど。
5月のファイナルに向けて本格的に勉強を始めたのは4月頃から。「もうちょい頑張れたんじゃないかな」と、笑いながらの振り返りでした。


トロント大学を選んだ決め手
14校の出願結果——カナダ全勝、UCバークレーも合格
出願した約14校の結果は以下の通りです。
| 国 | 大学 | 結果 |
|---|---|---|
| カナダ | トロント大学(セントジョージキャンパス) | 合格 |
| カナダ | トロント大学(ミシサガキャンパス) | 合格 |
| カナダ | マギル大学 | 合格 |
| カナダ | UBC | 合格 |
| カナダ | ヨーク大学 | 合格 |
| アメリカ | UCバークレー | 合格 |
| アメリカ | UCサンディエゴ | 合格 |
| アメリカ | UCデイヴィス | 合格 |
| アメリカ | スタンフォード大学 | 不合格 |
| アメリカ | 小規模カレッジ(2校) | 不合格 |
※UCLA等一部の結果は本人が正確に覚えていないため未記載。UCはポータル(共通出願サイト)から一括出願が可能で、4校程度に出願したとのこと。
カナダの大学は全て合格。アメリカはUC系の3校に合格した一方、スタンフォードや小規模カレッジには届きませんでした。「アメリカはやっぱり結構厳しくて」とりほさん。「まあ結果オーライみたいな(笑)」と笑っていました。
なお、トロント大学はキャンパスが3つあり、りほさんが通うセントジョージはダウンタウンの最も大きなキャンパス。他のキャンパス(ミシサガなど)は郊外にあり、車がないと厳しい立地で、キャンパスライフの雰囲気もかなり異なるそうです。
奨学金1,100万円と「まだ決めなくていい」自由度
トロント大学を選んだ決め手は、大きく3つありました。
エントランススカラーシップ:4年間で100,000カナダドル(約1,100万円)
トロント大学には、出願時の高校の成績をもとに自動で選考されるエントランススカラーシップの制度があります。追加の応募は不要で、合格通知と一緒に奨学金の案内が届いたそうです。
りほさんの場合、総額は100,000カナダドル。配分は初年度が40,000ドル、2〜4年目は各20,000ドルで、毎年口座に振り込まれる形でした。この奨学金で生活費を賄い、学費は親が海外送金で支払うという役割分担になっています。
なお、JASSO(日本学生支援機構)や柳井正財団などの日本の奨学金にも応募していましたが、いずれも不採用だったとのこと。結果的にトロント大学のエントランススカラーシップが、唯一の奨学金になりました。
専攻の自由度
トロント大学では、スペシャリスト(1つの分野を深く学ぶ)、ダブルメジャー(2つの専攻)、メジャー+ダブルマイナー(1つの専攻+2つの副専攻)のいずれかを選べます。
自由度が高くて、出願した時点でヘルス関係の勉強したいっていうのはなんとなく固まってたんですけど、大学に入ってみてもっとやってみたいことが見つかるかもしれないし、変わるかもしれないなって。
イギリスの大学は入学後に専攻を変えるのが難しいと聞いていたため、まだ気持ちが固まりきっていなかったりほさんにとって、この柔軟性は大きなプラスだったようです。


UCバークレーとの比較——奨学金がなかった
もう一つの有力候補はUCバークレーでした。UC系の大学にも留学生が対象のメリットベース奨学金は存在しますが、りほさんの場合は該当せず、学費は非常に高額になる見込みでした。
UCって多分奨学金が一切なくて、カリフォルニアの住人じゃないといけなくて。めちゃ高くて、ちょっと無理だなって。両サイド見た時にやっぱりトロントの方が現実的だし。
行きたい気持ちと費用の現実を天秤にかけた結果、トロント大学を選んだという判断でした。
トロント大学の学業
1,000人の講義から20人のディスカッションへ
トロント大学のセントジョージキャンパスでは、1・2年生は全員が同じ基礎科目を履修します。そのため、レクチャーの規模は数百人から1,000人にもなるそうです。
もう1,000人みたいな感じなので、スピーチを聞きに行っているみたいな感覚の方が近いかなと。
NISは小規模校で、先生と話すのが当たり前の環境でした。「お互いの名前も知らないし、先生も私の名前は全然知らない」という距離感には、最初ギャップを感じたそうです。
ただし、大講義とは別に「チュートリアル」と呼ばれる少人数(10〜20人程度)の時間が設けられていて、TA(ティーチングアシスタント)とのディスカッションや問題演習の機会があるとのこと。1つの科目がレクチャー+チュートリアルのセットで構成される形です。


高学年になると一変します。専門科目は20人弱のクラスで、ディスカッション中心の授業に。
高学年になるにつれてどんどんクラスの大きさが小っちゃくなっていって、教授とも知り合いみたいな感じになれる。
1学期に取る科目数は5が標準で、最大6まで可能。りほさんは1年目の両学期だけ4科目に抑え(2学期目は1科目ドロップ(履修取り消し))、2年目以降は5科目ずつ取ってきました。4年生の秋学期は単位が足りていたため4科目。授業は週1〜2回で、1回あたり1〜2時間が多いとのこと。高学年では2時間の授業が増え、まれに3時間のレクチャーもあるそうです。
Health & Disease——「健康って何?」を多角的に学ぶ
りほさんの専攻構成は、メジャーがHealth & Disease(健康と病気)、ダブルマイナーが免疫学とバイオエシックス(医療倫理)です。
健康について理系の医学的な面から見るのもそうだけど、例えば経済学であったりとか、社会学とかいろんな側面から「健康って何?」とか「どういうことがあったら健康になるのか」みたいな。公共衛生とかもかじったような勉強がメジャーで。
理系でありながら、社会科学の視点も含む学際的な内容です。メジャー・マイナーの具体的な組み合わせは入学後に決めたそうで、トロント大学の専攻制度の柔軟さが活きた形でした。
課題の構成は、理系の授業の場合ミッドターム(中間試験)が1〜2回、ファイナルエグザム、その間にエッセイやレポートが1〜2本というのが典型的なパターンだそうです。テストの比重が大きく、ミッドターム25%+ファイナル50%のような配分もあるとのこと。低学年の理系はテスト中心で、4択の選択式が多かったそうです。
IBの課題量をベースにすると「想像通りか、やや少ない」くらいの感覚で、「ありえない量だ!みたいなことはあまりない」と話していました。


トロントでの暮らし——費用と生活のリアル
寮の1年目——ニューカレッジ
1年目はキャンパス内のニューカレッジという寮に入りました。シングルルームで、クローゼット・机・ベッドのワンルーム。広くはないものの、ルームメイトがいない個室でした。シャワーやコモンルーム(ソファ・テレビ・小さなキッチン付き)はフロア約20人で共有する形です。
寮にはカフェテリアがあり、ミールプラン(食事付きプラン)が含まれていました。
レパートリーが多い。ビュッフェって言ったらちょっと豪華みたいですけど、いろんなところから選べるタイプだったので、まだ良い方だったらしいです。
セントジョージキャンパスにはカレッジ(寮)が複数あり、それぞれカフェテリアが異なります。ニューカレッジは選択肢が多い方だったそうですが、味の評価は「可もなく不可もなく(笑)」という正直なもの。寮費はミールプラン込みで月1,600〜2,000カナダドル程度。家賃と食費がまとめて請求される形のため、正確な内訳は覚えていないそうです。


アパート生活——家賃1,350ドルとサブレットの知恵
2年目からは寮を出てアパートで暮らしています。現在は日本人の友人と2ベッドルーム・2バスルームのアパートをシェアしていて、それぞれ自分の部屋とバスルームがあり、キッチンを共有する形。家賃は月1,350カナダドルで、トロントの相場では安い方だそうです。
物件探しは不動産のウェブサイトに加え、個人のエージェント(不動産仲介者)にWhatsAppやメールでやり取りして進めたとのこと。「会社を通してとかじゃなくて、この一人の人と会話をしてた感じ」で、みんなそういう形で探しているそうです。
トロントの学生の間で一般的なのが「サブレット」(又貸し)の文化です。
サブレットする習慣があって、1年間のリースで家を借りてるんですけど、例えば4ヶ月カナダにいなくてもいいから、その4ヶ月だけ別の人に貸す。
りほさんは夏休みの約4ヶ月間は日本に帰国するため、2年目にはサブレットを利用しました。荷物はアパートの地下にあるロッカーや友人の家に預けて、部屋を空けるそうです。
2〜3年目は中国人の友人とルームシェアしていました。「私は人を呼ぶ習慣があんまりなくて」というりほさんにとって、帰宅したら友達の友達が家にいるという場面はカルチャーショックだったそう。嫌だったわけではないけれど、ホームパーティーの頻度には驚いたとのことでした。
生活費の全体像
学費は親が海外送金で直接支払い、生活費はエントランススカラーシップから賄うという役割分担です。
奨学金が10月か11月ぐらいに口座に入ってくるんですけど、それが入ってくる口座を自分のカードの口座に設定しているので、一番最初に送ってもらったお金以外は海外から入金するってことはあまりないです。
最初にカナダの口座へ親から送金してもらった後は、奨学金が毎年振り込まれるため追加の海外送金はほぼ不要だったとのこと。月々の支出は以下の通りです。
| 項目 | 金額(CAD/月) | 備考 |
|---|---|---|
| 家賃 | 1,350 | 2bed2bath、友人とシェア。トロントでは安い方 |
| 生活費(食費・買い物・交通費など) | 300〜500 | クレカ履歴の平均。自炊中心、移動は徒歩が基本 |
| 通信費 | 約50 | FIDO。35GB |
| 帰国フライト | +約1,000 | 年2回(冬・夏)、帰国する月のみ発生 |
※りほさんの体感で100,000 CAD ≈ 約1,100万円
食事は基本的に自炊で、外食は友達と遊びに行くときくらい。家が学校から近いため、昼も家に帰って食べることが多いそうです。
買い物先はチャイナタウンの中華系スーパー(一番安い)、T&T(中華系の大手チェーン)、Metro(カナダの一般的なスーパー)と使い分けていて、中華系スーパーで売っている甘い豆乳やうどんがお気に入り。日本の食材も手に入りますが値段は高く、帰国するたびにお菓子などを持ってくるとのことでした。
移動手段は徒歩が基本です。電車やストリートカー(路面電車)はあるものの「あんまり時間通り来なくて、待ってるなら歩いた方が早い」ため、シティバイク(自転車シェアリング)の年間パス(80〜100カナダドル)を使っています。
通信はFIDO(Rogersの格安ブランド)で月約50カナダドル。カナダは大手3社(Rogers、Bell、Telus)がほぼ独占していて「35ギガとか絶対いらないんですけど、他にチョイスがない」という状態だそうです。
銀行はCIBC(Canadian Imperial Bank of Commerce)で口座を開設しました。必要書類はパスポート、学生ビザ、大学の合格通知(アクセプタンスレター)。日常の支払いはほぼキャッシュレスで、現金を使う場面はほとんどありません。
1〜3年目はアルバイトもしていました。現地のラーメン屋で調理やサーバーを3年間、ベトナム料理店でも勤務。カナダでは学生ビザでキャンパス外での就労が認められており、2024年11月の規定変更後は週24時間が上限です。
保険——大学の義務保険と利用経験
保険は大学が全学生に義務付けているUHIP(University Health Insurance Plan)に加入しています。加えてStudent Benefitsという制度もあり、どちらも学費と一緒に支払う形。民間の保険には入っていないそうです。
実際に使った経験もあり、コンタクトレンズで目が痛くなった際に眼科を受診したときに適用されたほか、メガネの購入時にも一部補填があったとのこと。大きな病気や怪我はなかったものの、必要なときに使える保険が大学を通じて整備されている環境です。


トロントという街
「すごい住みやすいところだな」——到着時の印象
カナダに着いて寮に入り、オリエンテーションが始まると、すぐに友達ができたそうです。
すごい住みやすいところだなって思った。人も優しかったし、みんなオープンに話してくれるようなウェルカムな感じだったので、すごい居心地がいいなと思った。
英語については「インターに通ってたっていうのが大きい」として、困った経験はなかったそうです。
トロントはアジア人コミュニティが大きく、特にチャイニーズの人口が多い街。チャイナタウンも大規模で、日本のカルチャーに興味を持って話しかけられることの方が多いといいます。差別的な経験は、りほさん自身も周囲の日本人の友達も「あんまり聞いたことがない」とのことでした。
治安——「身の危険を感じることは絶対にない」
治安についてりほさんは「身の危険を感じることは絶対にない」と話しています。アメリカのような銃社会の不安は感じないものの、気になる点はあるそうです。
唯一気になることがあるとすれば、大麻が合法なんですけどカナダって。ドラッグ面がちょっとゆるゆるなところと、ホームレスの割合が結構多いので、普通に街歩いてて横にホームレスがいるみたいなのは日常茶飯事。
ただし「住んじゃえば気にならないし、襲ってくるとかなんかされるみたいなことはない」とのこと。夜も一人で出歩くことがあり、真夜中に友達の家から歩いて帰ることもあるそうです。ダウンタウンのキャンパス周辺はお店が多く、比較的安心できるエリアだと感じているようでした。もちろん「気をつけた方がいいエリアはあるかもしれない」とも添えていました。
マイナス8度と「グレーな空」——冬がトロント最大の試練
トロントで一番しんどいこととして、りほさんが真っ先に挙げたのが冬でした。
11月から3月、場合によっては4月頃まで続く長い冬。気温はマイナス8度にもなり、去年は4月中旬にも雪が降ったとのことです。
日が上っててもグレーみたいな感じで、お日様の光みたいなイメージがあんまりなくて、明るいだけみたいな。ちょっとどうしても気が沈んじゃうっていうのはある。
寒さだけでなく「暗さ」が精神的にこたえるという話は、りほさんに限らず「みんな言いますね」とのこと。勉強面で大変な時期(ファイナルエグザムが集中する12月や4月)がちょうど冬と重なるのも、しんどさに拍車をかけているようです。トロントの冬は、この街で暮らす上で避けて通れない現実でした。




ホームシック・友達づくり・4年間の成長
「犬に会いたいな」——4年経っても消えないホームシック
ホームシックは、4年経った今でもふとした瞬間に訪れるそうです。
定期的に連絡はもちろん取ってるんですけど、やっぱり近くにいるのとは話が違うじゃないですか。実家で犬飼ってたりするんで、犬に会いたいなっていうのは結構考えたりします。
サンクスギビング(カナダでは10月)の時期、現地の友達が実家に帰って家族と過ごすのを見ると「あぁ」となるそうです。対処法は友達と過ごすこと。友達同士でディナーパーティーを開いたり、遊びに出かけたりして気持ちを切り替えているとのことでした。
日本には年2回帰国しています。冬休みと、約4ヶ月ある夏休み。夏はほぼずっと日本で過ごすそうです。
寮・Instagram・サークルで広がった友達の輪
トロント大学で友達ができたルートは主に3つあったそうです。
1つ目は寮。カフェテリアでよく見かける人や、部屋が近い人と自然に仲良くなる形です。
2つ目はInstagram。入学前に「Class of 2026」(2026年卒業予定の同級生をまとめた)アカウントが立ち上がり、自分のプロフィールや写真を投稿していくそうです。
そこで共通の趣味だったりとか同じ出身の人と話し始めて、実際に学校が始まったら会うみたいなことが結構あった。そこで繋がった人はかなり多いです。
3つ目はサークル。りほさんはトロント大学の日本人団体に1年目から所属し、ダンスの仲間とも友達になりました。
一方、1・2年生の大講義を通じて友達を作るのは「あんまり思ったほどではない」とのこと。理系の実験でラボパートナーと話す機会はあるものの、授業起点の交友は限定的だったようです。
生活力と考え方の広がり
4年間で変わったことを聞くと、りほさんは「生活力」を挙げました。
自分が知らないところに来て一人で生活するとか、一人でコミュニティ作っていくみたいなのは新しい経験で、生きる力みたいなのが強くなったのかなと思ってます。
日本にいたら出会わないような人やコミュニティに触れる機会があったことで、考え方も広がったそうです。「人生観って言ったらちょっと壮大なんですけど」と前置きしつつ、やはり変化はあったと話していました。
卒業後のキャリア——大学院かボスキャリか
大学院の結果を待ちながら
りほさんは2026年に卒業予定。卒業後の第一希望は大学院で、理系の研究を深めたいと考えているそうです。取材時点では結果を待っている状況でした。
並行して就職活動も行っています。海外大生やバイリンガル向けの就活イベント「ボストンキャリアフォーラム」(ボスキャリ)を利用し、外資系企業を中心にエントリー。準備を始めたのは4年目の9月中旬で、ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)などの書類作成から着手。本人いわく「普通の人より多分遅かった」とのこと。ボスキャリ本番は11月中旬です。
その間の約1ヶ月間、オンラインでの面接が集中しました。
毎日面接があったりとか、1日に2回面接があったりとかっていうスケジュール感は全然ありました。
面接した企業は4社で、2次・3次を含めた面接回数は約10回。学業との両立は大変だったものの、ボスキャリの日程より前にオンライン面接で内定を獲得できたそうです。「結構気軽な気持ちでボスキャリに挑めた」と話していました。
院に受かれば院へ、そうでなければ外資系企業で働く。りほさんはトロントでの最後の学期を過ごしながら、大学院の結果を待っています。









